日本人が知らない満洲国の真実 封印された歴史と日本の貢献 (扶桑社ＢＯＯＫＳ新書)

完全な朝鮮族の土地である朝鮮を併合したのとは違って、満洲はもともと漢族の土地ではなく、モンゴル族、満洲族の土地であり、同じく漢族の侵入に反発していた周辺民族の視点から満洲国を再評価することは、意義ある研究だと思う。それに、当時のアメリカも、蒋介石も満洲の日本支配はやむなしと考えていたらしいから、著者の言うように、日本軍の愚かな華北侵入がなければ、その後の東アジア史は大きく変わっていたのではないかと思う。著者の政治的立場を抜きにして、なかなか示唆に富む本だと思う。ただし、ことが、近現代史や、ソ連やスターリンに関することとなると、いささか、えっ？と思う点も出てくる。著者はスターリンのモンゴルに対する政策については、かなり柔軟であったように書いているが、モンゴル人に対するスターリンの処刑、粛清は恐るべきものであったことは見逃してはならないと思う。また、ノモンハン戦争で戦った主力が満洲国軍であったように書いているが、事件当初は別にして、戦闘の主力は当然関東軍であることは間違いないと思う。それと、今日ロシア領の沿海州が発展していない理由として、「いまだに虎がいる」というのはいかがなものか。虎は絶滅危惧種で、世界的に保護が叫ばれています。それに野生動物がいることが未開発のしるしってんなら、日本にだっていまだ熊が多数出没してますよ。