破門

黒川氏著疫病神シリーズの『破門』。関西ヤクザである桑原というイケイケの暴力的極道と由緒正しいヤクザの家柄ながら、自由気ままな性格の堅気の二宮というコンビが巻き起こす事件を軽快な会話の連続で描く。今回は、映画製作詐欺にまつわるヤクザ抗争を描き、金に異常な執念を燃やす（だが平気でギャンブルなどで損をする）二人の主人公が活躍する。読み始めた時は、時事問題などと関連するわけでもなく、ヤクザ界隈の小さな、閉じた話かと思った。しかし、読み進めるにつれてストーリーが複雑になってくる。二人が所属したり関係したりする暴力団組織との軋轢が生じるが、主人公たちは、この摩擦を巧みにロジック（筋目）を操り、効果的にエサ（金）をちらつかせることなどで、ピンチを切り抜けていく。登場人物の特徴をうまく描写しており、しかもとてもリアルである。メインのストーリ－の追い込み・抗争以外の、マカオのカジノシーンや女性やインコとの会話なども洒落ていて、面白い。凄い筆力だ。この小説、極道社会に題材をとっているが、人が生き抜く上での普遍的な問題を巧みに描いていることがわかった。