骨董「緑青」 (Vol.28)

商品写真で、表紙に「清水三年坂美術館コレクション」「金工鐔名品集」と書かれているのが読めると思う。普通、こういった煽り的な言葉は、雑誌の場合、商品の半分程度の分量に当てはまっていればいいほうだと思うが、この商品はいい意味で大きく外れた。（評者は『緑青』シリーズを購入したのは初めてである。）全９６ページ中、目次や前書き・裏表紙を含めての２０ページ足らずを除けば、残りは全て、京都市の「清水３年坂美術館」の「金工鐔」の写真図録である。基本レイアウトは、１ページに１作品を割り当て（大小がセットとなっているものは１作品として扱っている）、ページの半分を超える大きさでおもて面の全体又は凝った細工部分の拡大図を載せ、残りの部分に裏面の全体図と１５０〜２００字程度の解説が載せられている。解説は、たいてい作者の経歴などであり、字数も相俟って、金工或いは彫金の知識がない人にとっては、この本単独では、眺めて楽しむ以上のことは難しいかもしれない。例えば、「竪丸形赤銅魚子地高彫象嵌色絵」、と書いて、なんの解説もないのである。ただし、作品の保存状態が良かったのもあるだろうが、写真だけでも、彫金彫刻古美術が好きな人は、かなり楽しめると思う。先の例に出した言葉も、分解してネットで検索したり、或いは彫金・金工の技術について調べれば、それほど苦労せずに理解できることを考えれば、金工の世界のとっかかりに丁度良いのかもしれない。個人的に残念なのは、好きな透し鐔がほとんど載っていなかったことである。清水三年坂美術館館長の書いた前書きによれば、金工鐔と透し鐔を別物として扱っているそうなので、むしろ、透し鐔が載っているのがおかしいのかもしれない。雑誌『集』に、透し鐔の特集をした号があるようなので、購入したいところである。